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倫理委員会ニュース(7)

自転車マナーと研究者倫理

古谷 圭一(倫理委員会委員長) 第43巻、第6号、 No. 6, N64, 2008

 交通法規が変わって、自転車は車道を走ることが原則となった。気をつけてみると、いまだに、乱暴な運転をしているひとと出会うことが多い。昨夜も老人と自転車がぶつかり、老人が倒れたあとで車に乗っていた20代の男が怖くなって逃げ去り、翌日、逮捕されたというニュースが報道された。
 今朝も、自動車で走っていると、正面からゆうゆうと路端から2メートルは離れて自転車で乗った女性が来る。あわててこちらの方が右にハンドルをきって避ける。彼女にとっては車は当然よけてくれるもの、車道の右側を走るのは、どちら側でも良いから車道を走るように決まったからという意識であろう。交通法規では、自転車は左側車道を走る小型車と同じ分類であることは意識外である。だから、彼女は平気で走ってくる。

 昨年と比べて今年に入って、研究者のミスコンダクトについてのニュースがしばらくなかった。しかし、7月11日のニュースには、東大医科研のある教授の研究論文に虚偽記載があったことが報じられた。患者から採取した血液データの発表にあたって倫理審査委員会の審査なしに「その了承を得た」と記載したことが問題となっている。この教授は、研究論文の審査には、倫理委員会での審査を経る旨のことを書かなければ医学論文として審査を通らないことは知っていたようである。しかし、それは形式的なことで十分済むことと考えていた。まさに、反対側の車道をゆうゆうと走る自転車の女性と同じ意識である。倫理の問題は、この女性やこの教授と同じ危険性が内蔵されている。事故など起こらない。形だけ(面倒だけれど)守れば何とか済むとの考えを持つ人には、倫理のお説教や学会倫理綱領や行動規範はまったく必要がないしろもので、年会での特別集会もまったく関係がないものである。
 けれども、このような面倒くさいprocedureは、採取された患者の人権を守り、交通法規は、事故に巻き込まれる可能性のある被害者を守るためのもののはずである。反対車線をなんらの意識なく走るひとたちにどのように理解してもらえるか、そこが最大の出発点のような気がしてならない。
 

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