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倫理委員会ニュース(8)

大河内博(倫理委員会委員) 第44巻、第1号、N 1 , 2009.

 「倫理」という言葉を毛嫌いしたり、ことさらに「倫理、倫理」と騒がれることに抵抗感のある方は少なくないようである。私自身は3年前に倫理委員を拝命するまで「倫理」という言葉を特段に意識したことはなかった。しかし、倫理委員になってみると、色々なことが気になり出した。最近、気になる話題をご紹介したい。

 大学生の大麻事件が後を絶たない。2007年11月に関東学院大学ラグビー部員が大麻取扱容疑で逮捕・起訴され、2008年1月には有罪判決を受けて以来、今年に入って5月には関西大学、10月には法政大学、慶応大学の学生が逮捕された。「もしや本学の学生にも」と思っていた矢先に、私の勤務する早稲田大学の学生3名が逮捕されたとのきわめて残念な報道が飛び込んできた。
 大麻摘発事件は年々増加しており。2007年には3282件で過去最悪だったとのことである。全検挙数に占める大學生の割合は3.5%であり、覚せい剤の0.2%を大きく上回っている。なぜ、これほどまでに大學生が大麻に手を出すのだろうか。一部には、大麻は煙草より無害であるという識者による誤った言論もあるようであるが、大麻の種子がインターネットで購入できるという入手のしやすさから、興味本位やファッション感覚で大麻に手を出しているのが実態のようである。つまり、無知と倫理観の欠如に起因するのであろう。

 大麻の幻覚作用は多幸感、満足感、昂揚感となって現われるが、常用化して中毒になると判断力、記憶力、集中力の低下を引き起こす。さらには、錯乱状態に陥ったり、自殺衝動をも引き起こすようである。大麻や覚せい剤に関する教育は薬学部でもない限り、これまで大学で教えることはなかったであろう。このような教育は高校生が中心であったが、今夏に作られた「第三次薬物乱用防止5ヵ年計画」により大學生向けの教育も盛り込まれたようである。ただし、知識としていくら知っていても倫理観が欠如していれば、今後も大學生の大麻事件は後を絶たないような気がしてならない。そもそも倫理教育は大學生になってから教えても効果は期待できないのではないだろうか。

 さて、金沢で行われた第49回大気環境学会年会で、倫理委委員会主催の特別集会「ミスコンダクトが起こったなら」の座長を務めた。東京理科大学名誉教授であり、元日本化学会会長および倫理委員会委員長の井上祥平先生に「倫理に関する日本化学会の活動」、金沢工業大学教授の札野 順先生に「責任ある研究活動を促進するための国際的協力体制の構築を目指して‐OECD Global Science Forumの活動を中心に‐」、そして倫理委員会委員長である古谷圭一先生に「私の場合の『ミスコンダクトが起こったなら』」についてご講演いただいた。3名の先生から大変示唆に富んだお話を伺うことができた。倫理委員会主催の特別集会は今年で3回目であったが、1回目はまずまずの聴衆が集められたものの、昨年と今年は本当にさびしい状況であった。あまりの聴衆の少なさに、講師の先生方に「倫理委員会主催の講演会はなかなか人が集まらないが、どうしたら盛り上げることができるでしょうか?」と率直に御意見を伺ってみたところ「どの学協会でも同じような状況である。それでよいのです。」というお答えを頂いた。たしかに、倫理委員会が忙しくない学協会で問題がなく、平和であることを意味しているので喜ぶべきことなのかもしれない。

 今後も様々な「倫理」情報にアンテナを張り、学会員の皆様に「倫理」情報を提供しつつ、縁の下の力持ちとして倫理委員会を務めてたければよいのかなと考える今日この頃である。
 

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